2016年10月28日

アウトレンジの恐怖

実際にテルミンを演奏する時に自分が一番気になるポイントがこれ。

テルミンはサブっぽい立ち位置の楽器なので、ダメなときは休場することになるのだが、それでも本番前のドタバタ状態で音が出ないことを経験するのはあまり気分の良いものではない。

アウトレンジとは、テルミンに搭載されたオシレーターの発振周波数が何らかの理由で影響を与え合う相対位置から外れてしまったことで、相互干渉出来る位置から周波数が離れてしまうと、当然ながら音が出なくなる。

温度や湿度だけではなく、現場の電界強度等のよく解らない理由でチューニングが狂うのがテルミンという楽器の特性なのだが、計測機器無しで勘でチューニングを行った場合にドツボに嵌まるパターンを何度も経験してきた。

トラブルに対する対応方法としては、なによりチューニングロッドの常時携帯、チューニングを行うためのアクセスポイントの確保(要は筐体にチューニング窓を開けてしまう)アースポイントの確保、リニアリティーに影響を与えない範囲で行う電磁シールドの徹底、そして、バッテリードライヴ化による電位差の排除といったところか。

なによりベストと思われる対処法は、調整コイル等の可動部分を極力無くす方向で設計を行うことなのだろうが、市販品ベースのものを使用する場合は、前述したような項目の改造を適宜行うことになる。 

今回、OpenThereminが採用しているVariCapによるトリマー機能は他のThereminにも応用できそうなアイデアなので、コイルの固定化+Varicapの使用でどこまで安定化を目指せるかとても興味が有るのだが、制御をマイコン経由で行わずに手動に頼る方法を確立する必要がある。
posted by Yasuski at 10:23| Theremin

2015年11月29日

Kathemin@基台の取り付け

サウンドハウスからマイクホルダー用のパーツが届いた。

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Shure製のマイク基台はアルミボックスに取り付ける。

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シャシーの基本形はこうなった。

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マイクスタンドを接続して自立させたところ。

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まず、ネコロンの底部センターにホールソーで孔を開ける。 

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ベースのガラスエポキシ板ごと貫通させる一方、Shure製のマイク基台をアルミボックスの該当する場所にネジ止めする。

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先に加工した地雷探知機アーム側の固定が甘く、重量物であるネコロンボディーの支持は無理だった。

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サービス性を考慮したオーディオ回線用6pコネクターの装着場所が悩みどころ。 

重量配分を考慮して、シンセ用コンパートメントの取付オフセット量を前方にズラすことにした。

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posted by Yasuski at 20:53| Theremin

2015年11月27日

Kathmin@MatrixPinの製作

VCS3等EMS系シンセに採用されている、マトリックスパッチ方式の回路ルーティンは、長々とコードを引き回す必要がなく非常に便利な仕組みだが、コレには抵抗を内装した特殊なPatchPinが必要。 ただし、このパーツの入手がなかなか難しい。

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これが無いとCVや音声信号をミックスできないわけで、絶対に必要なアイテムなのだが、購入した中古のGhilmetti製マトリックス・スイッチは楽器に実装されていたものではなく、当然ながら抵抗入りのpinは付属していなかった。

ということで、またもや「自分で作るしか無い」わけだが、ざっと計測したところpinの直径は1.5mm程だった。 まずはその径の真鍮パイプと、絶縁用のテフロンパイプ、抵抗を内装するためのスリーブを準備することになるのだが、安い真鍮パイプは1.4mmしか見当たらず、ひとまず値の近いコレを購入することになった。

抵抗のサイズから逆算したスリーブの外径は4mmとしたが、pinとの直径差を埋める必要があり、隙間を埋めるシムとなるパイプも発注しなければならない。 スリーブは内径3mmで、ここに金属皮膜抵抗を収める。オリジナルはプラ製のスリーブだが、ここを金属とすることで抵抗の配線を簡略化出来る。 スリーブの外装は、予め火で炙っておくか、熱収縮チューブなどで絶縁すれば良いだろう。

EMSに関する記事を検索すると、2.7kと6.8kがデフォルトで装備されていたようだが、今回はEMSの完コピを目指しておらず、この値に拘る必要はない。 使い易い10k等汎用性の高そうな値を用意する。

その後、マトリックススイッチの改良案を発見した。 記事によると、回路のローインピーダンス化が必要ということだ。

http://www.hinton-instruments.co.uk/ems/emsmisc.html

到着した、MatrixPin用素材の1.4mmパイプを試したところ、径が細過ぎて接合が頼りない感触だったので、新たに1.6mmを別の業者に発注した。
 
メジャーな工業規格では1.4から2.1mmに径が飛ぶが、それ以外の細かいゲージは模型用のものが出回っているようだ。 1.6mmでダメな場合は1.7mmにトライするが、実測2.0mmのパイプは確実に不適合だったので、マージンを考えると1.7mmが限界と思われる。

一方、テフロンパイプは公称値よりも若干太めに実測値が出るようなので、1.5mmのテフロンパイプには1.6mmが適合しそうだ。 ノギスが行方不明なので確かなこととは言い切れないが、1.4mmのパイプは明らかに仕様よりも細く感じる。これは「実測値と公称値は別」というよくあるパターンで、つまりはロット違いによるサイズの変動が予想される。 やはり微妙なサイズの部品は現物合わせで見極めるしかない。

MatrixSwitchのバッファーを構成する QuadOpAmp 1単位の回路。

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posted by Yasuski at 22:20| Theremin

2015年11月25日

Kathemin@各種パーツの製作

まずは、アンテナだが、真鍮スペーサーとアルミ/銅円盤をチェインする構造で、基底部の円盤がグランド電位となっている。

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アンテナ端子はSMB。基底部をグランド電位としたのは本体側で発生する電位差を遮蔽する事が目的で、OpenThereminの筐体によって、ピッチアンテナの直線性への影響は軽微なことが判っている。

次に、スタンド基台のアダプタを製作した。 ベースとなるのは地雷探知機用アームの先端部に接続されるナットで、これにマイクネジ変換アダプタを取り付ける。 マイクのネジ径は非合理の象徴のような規格が乱立する悪夢世界の産物で、産業用ネジではマイナーなヘンテコ規格に悩まされることになるが、コレはその良い一例。 結局、ナットの側面にネジ穴を切って、無理矢理イモネジで固定するのが速道だった。

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ボディー基底部に設置した補強用のガラスエポキシ板を緩み防止機構付きのナットを使って固定した。

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Ghilmettiのマトリックス・スイッチは20×20サイズの比較的大きめのモデルで設置場所に苦労しそうだ。 これには専用の抵抗を内装したMatrixPinが必要だが、希少部品のために自作する必要がある。 pinの外径は1.5mm程度なので、1.4mmの真鍮パイプとテフロンパイプを組み合わせた抵抗ユニットを製作する。オリジナルの抵抗値は2.7kだが、これは10kに変更する。 オリジナルの回路には接続インピーダンスに問題があるので、CVルーティンには専用のバッファーアンプを追加した方が良いだろう。

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サルベージしたジャンク回路のスロット基板はパーツを取り外し、基台として使用する予定。

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posted by Yasuski at 18:31| Theremin

Kathemin@ユニットのアセンブルを行う前に

楽器を組んでいく上で、いつも疎かになってしまうのがサービス性で、故障が多い試作品ほど分解組立の頻度が高いことをつい失念して、製作意欲の欲求が赴くままに作業を強行した結果、陥ってしまう非合理の罠といえる。

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今回は、外装ありきでスタートした計画なので、何よりも重要なポイントは、ネコロンの開口部を通過しないパーツはNGということ。

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導入する予定のシンセ用コンパートメントはこれに抵触しそうな物件だが、ハコの奥行は電源の仕様と絡んでくる微妙なポイント故、早急な判断は避けたいところ。

ということは、電源の仕様決定が最優先されるべき案件となるが、消費電力の兼ね合いを考えて、事前にマージンを見積もらなければならない。

とりあえず考えているのは、供給電圧を5Vに統一してアナログ回路で必要となる±12Vはユニット内部に設置したSWレギュレータを使ってジェネる方式で、これには電池駆動が簡単に行えるというメリットが存在する。またユニット単位の電源供給ラインがシンプルになるので、ユニットを取り外して修正を行う場合に、結線の確認を行う必要もなくなる。 写真は、音源のベースとなる基盤スロット。

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使用する電源ユニットは現在運用しているEtherwave(改)で性能を実証されているが、問題となる供給電力は100mAと容量的には心許ないものがある。

シンセユニットに必要な電力は0.4A程度になりかねないが、必要とされる電力を供給するために、モジュール単位で電源ユニットを配備することで、キャパの問題は解決する。また、VCOにPICを使うことで、少しは消費を抑えられる可能性があるが、厳密な消費電流を計算せずに作業を進めるには、電源の並列化が一番の早道と考えている。

何れにしてもThereminの性能を維持することを優先する設計思想なので、シンセユニットは独立して電源を落とせる仕様とすべきだが、その場合も5Vで統一した電源ラインが回路の単純化に貢献する。
posted by Yasuski at 18:27| Theremin

2015年11月23日

Kathemin@デザインの検討

プラスティックで成形された猫用シェルター「ネコロン」にThereminを内装させることを思いついた。

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計画の一環として、まずはアルミ製の化粧パネルとボックスを調達した。 

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元はアメリカ政府の気象庁?に当たる組織が使っていたと思われるデータロガーシステムの一部だ。

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その緑色の本体はベースアンプになる予定だったのだが、現在は放置中。 これとネコロンを組み合わせてアンプシステムを作ると格好良さそう。 両方プラ製なので、見てくれの整合性も成立する。

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ネコロン本体は内部のパーツを支えるのではなく、ネコロンに荷重がかからないように、ボックスから外殻を吊り下げるデザインにする。

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ガラスエポキシ板の補強板は8点止めでボディーと接合する。 ボックスはガラスエポキシにスペーサーで浮かせた形で固定する。 固定点は4もしくは6点とする。 荷重の分散を考えて、6点による吊り下げが正解か。

アンテナの固定は、ミミの先端に開けた小穴を通してM3のビスで行う。 

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アンテナ基底部の大きな円盤はグランド電位として、本体内部に展開されるパーツのマスからアンテナをシールドする。 アンテナの円盤は、ブラス製のスペーサーを使ってチェインしていく。

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八木アンテナ風に導電体を配置するデザインは一度やってみたいネタではあるが、Thereminは共振周波数が低過ぎるので、このサイズで組んでも効果は望めない。 

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故に「導波器」の成立は全く見込めないが、八木アンテナの「反射器」に当たる部分をGNDに落とすことで、指向性をもたせることは可能かもしれない。 基台はSMAコネクタのグランドで、芯線を金属スペーサーにハンダ付けする。

底板はガラスエポキシ板を8角形に加工したものを取り付けた。ボックスの固定は、内部のクリアランスを稼ぐために3点止めとしたが、これで問題は無さそう。

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まず、ボックスを取り付けた後、、、

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パネルを実装した。

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基台とのクリアランスはいい感じに取れているが、アンテナとのクリアランスが不安要因となった。 アンテナの性能次第で、パネルの実装の可否が決定する。

パネルに仮付けしている電源コントローラーパネルにバッテリードライヴとACドライヴの切替え表示があるのは、元のジャンクボックスが屋外の使用を前提としたものだったためだろう。

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トランジスタ型テルミンに飽きた場合は真空管テルミンへのチェンジが可能なように、ボックスのレイアウトを可能な限り中央に寄せてある。 またボックスは、ガラスエポキシ基盤によって完全にネコロンからフローティングされているので、熱の遮蔽も完璧だ。
posted by Yasuski at 21:29| Theremin

2015年11月22日

EtherwavePlusの回路を精査する

見たところ、回路構成はHotrodEtherwaveThereminに掲載されていた原典と同じだが、パーツはSMDに変更されている。

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本体との接続は10pinコネクタとは別に、5pinコネクタを経由して音声とCVのやり取りを行っている。

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FVCの前段はLM13600を使ったコンパレーターとシュミットトリガーで構成されていて、加工された信号をカウンターで分周する。

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分周された信号は、S/H等をシーケンスにドライヴして発生させたパルスの平均値を出している。

パルスを平滑化したHz/V出力は、ここでV/Oct方式に変換される。 

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黒い抵抗は温度補償型のもので、そこそこ本気モードであることが判る。 6pinの超小型パーツはペアTr。OpAmpはTL062と汎用品だが、ここを高精度型に交換することで、回路全体の精度が上がる可能性がある。

ヘッドフォンアンプとGate信号をドライヴしていると思われる部分。

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ヘッドフォンアンプにはLM833を使用している。 これは順当な選択だが、低ノイズを目指す場合はここも交換したほうが良い。

FVCの性能がイマイチな場合はU2Cの出力をVFC32に接続し、S/Hからの信号をR17に戻して、カウンタ以降のオリジナル回路をスキップする。 S/HはLM398やSHC5320等の専用ICを使用することになるが、これはGate信号でドライヴすればよいだろう。 

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posted by Yasuski at 16:39| Theremin

EtherwaveTheremin@基板の改造

昨日は、頂きもののEtherwaveTheremin基板の改造を行っていた。

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交換する予定の部品を取り除いたあと、クリーナーで清掃を行い、トランジスターと各種コンデンサー、金属皮膜抵抗を順次取り付けていく。

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Trには2N2222のハーメチックシールタイプと、2N3904 互換の MAT01 を使用。電解コンはOSコンとタンタルに、積層セラミックは、マイカと特殊な仕様の超高安定度コンデンサーに交換している。

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金属皮膜抵抗は、温度変化に敏感なオシレーター周りを優先して、在庫している値のみを交換した。 交換が叶わなかった数本は、後ほど発注をかける予定。

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念のため、コイルに導通テストを行ったところ、Pitch側の一つが断線していたので、真ん中の一個を交換している。 

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値は10mHと大きめ。Pitch/Volume共にコイルはそれぞれ3個配置されているが、周波数が低い分、Pitch側の値は大きくなる。 ちなみに、Volume側は5mH✕3だった。
posted by Yasuski at 10:22| Theremin

2015年10月21日

PhaseDemodulator@単純化した回路を使って部品定数を探る

順番が逆になってしまったが、基本的な回路定数を探るために単純化したPhaseDemodulatorの基本回路を使って、部品定数の特定を行うことにした。

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電源電圧、周波数や信号レベルなど異なる環境で同じような効果が得られるかどうか、単純な回路で検証を行った方が良いという今更ながらの結論。
posted by Yasuski at 21:37| Theremin

2015年10月17日

PhaseDemodulator@基板のパーツレイアウトを変更する

アドリブで回路を組んでいたら、何時の間にかRFアンプが離散してしまったので、基板の設計を本格的にやり直した。

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RFアンプは基板右上に集約し、LDRのドライバー回路は基板裏面に配置している。 VCA系は、左側にまとめた。

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基板をデザインするコツは、回路をブロック毎に少しずつ追加してその都度レイアウトを決めていくやり方で、手間はかかっても狭い範囲で試行錯誤を行った方が、結果として無用な混乱を回避出来るようだ。

RFアンプの近くにはLDRとLM386で構成されたDemodulatorを配置している。 FETにはSOT-23サイズのもの採用して、専有面積の削減を狙った。

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VCAとCV系はこの辺りにまとめた。 以前混在させていた信号はオーディオ系とCV系をOpAmp毎に分離している。 FETで構成した電子スイッチは、入出力端子を備えたスタンドアロン型とした。 455kHzのフィルターは、中点から抵抗を介してグランドに落としているが、この部分には並列にフォトカプラを仕込んで、肩特性を電圧制御出来るように回路を組んである。
posted by Yasuski at 14:10| Theremin

2015年10月14日

PhaseDemodulatorの信号入力レベルについて

Etherwaveに搭載するPhaseDetectorのオプティマイズに関する考察の続き。

オリジナルは、学研テルミンMODの過程で「発明」したLM386への信号バイパス回路による。 今回思い至ったのは、LM386に対する入力レベルの問題だ。

Etherwaveのオシレーターの出力レベルは実測値で約20Vppで、これは単電源仕様のLM386的にはオーヴァーレベルとなる。 学研テルミンのオシレーターの出力レベルに関しては計測を行っていないが、回路の電源電圧が5〜6Vということから、その出力電圧は5Vpp程度と考えられる。

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オリジナルの回路からマージンを見積もると、9〜10Vppが適正値と思われるので、現行の20Vppは完全にオーヴァーレベルで、波形がクリップする現象はこれによるものと推測される。

入力抵抗10kΩを合計30kΩ程度に増やして入力レベルを適正値に校正した後、クリッピングは発生しなくなった。 予測通り「過大な入力レベル」によって不具合が発生していたことが判明したが、今度はフィルター効果が皆無になってしまった。  

原因は、並列に設置しているダイオード検波回路の影響によると思われるので、次にこれを取り除こうとした時点でアンプの電池が切れた。
posted by Yasuski at 13:46| Theremin

2015年10月13日

EtherwaveThereminの改造に関する備忘録。

オリジナルの回路では、VCAの手前でダイオード検波を行って音声を復調しているが、

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ここに注入される各OSCの出力は15pF直結で、オシレーターからの出力レベルにはバランシングが行われていない。 そのうえ、オシレーターの発振周波数が近くなる→低音側にピッチを推移させると、出力同士が干渉しあう「引き込み現象」が発生して、動作が不安定になる。

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最初の改造では、OSCの各出力にバッファーアンプを噛ませてオシレーターの相互干渉を回避しつつ、トリマ抵抗で出力レベルのバランシングを行っていた。 

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その後、ダイオード検波回路と並列に復調用のMC1496を使用したDBM回路を追加したが、ダイオード側に送るオシレーター/出力バッファーからの信号は、抵抗を介さずコンデンサーのカップリングのみの直結状態でミックスを行っていた。

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MC1496側の等価回路は以下のようになっていて、入力同士の干渉は発生しない。

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現在の状態は、LM386を使ったPhaseDemodulatorをDBMと入れ替えているが、現状の回路構成のままでは引き続きDemodulator手前で信号の相互干渉が発生していることになる。 

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相互干渉を軽減するためには、信号ラインに抵抗を使ったミックス回路を挿入しなければならない。 その後に行うダイオード検波は、従来通りロータリーエンコーダーを使ったダイオード切替えスイッチで行う。

明日は、現在実装しているDemodulatorに抵抗を追加して、効果を実証する予定。
posted by Yasuski at 05:32| Theremin

2015年10月11日

PhaseShiftDemodulator基板の設計

adat関連の部品が届かないので、試作を行っているEtherwaveTheremin専用VolumeDetection回路の選定を始めた。

THAT4301というVCA専用のICにはRMS検知回路が入っていて便利そうなので、これを発注して実験に臨むことにした。 

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Etherwaveにアドオンすることを前提に設計を行っているが、新たに搭載するVolumeDetection回路を共振ポイントをクリスタルフィルターで拾う形式に変更することを考えている。 基板にはVolumeOscへの影響を軽減するために、Osc出力専用のFET高周波プリアンプを追加している。

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回路の構成要素をまとめると、

1)LM386を使ったPhaseShiftMixer
2)PhaseShiftMixerへ信号を分配するLDRのドライバー回路
3)PhaseShiftMixerのオンオフを行うFETスイッチ
4)オシレーター出力を安定させるためのFETバッファーアンプ✕3
5)オリジナルの信号とPhaseShiftMixerの信号をミックスするAudioMixer
6)VolumeOscからの信号を抽出するBPF
7)THAT4301を使った専用VCAとその周辺回路

となっている。

VCAの駆動はオリジナルLCフィルターを使わずに、455kHzのBPFを使う方式を採用した。 フィルターのQに関しては最適値が判らないので、とりあえずはソケット方式で実験したほうが良さそうだ。 素子は、Murata製の3端子セラミックフィルターを試用する予定。

THAT4301を手配したので、基板を発注する前にブレッドボード上でバラック回路を組んで実験を行う。  RMSディテクターの高周波特性が不明なので、事前の実験は必須だ。

ついでに、SOIC版の基板も製作しておく。

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調達に関しては、DIPはディスコン、SOICは30pinと20pinの2種類出回っているが、30pinは多分ディスコン。 現行モデルは20pinだが、単価はそれほど高いものではなかったので、量産する場合はこちらの設計になりそう。
posted by Yasuski at 13:48| Theremin

2015年07月13日

EtherwaveTheremin@PhaseDemodulatorRev.2.0基板の製作(其の2)

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ほぼ完成状態となった、PhaseDemodulator基板。

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裏面はジャンパー線の数を最小限に抑えた。 プリント基板化する場合は、小型化を進めるために部品をSMD化して、配置を再構成したほうが良いだろう。

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これがPhaseDemodulatorの心臓部。 単純なVRを使えば、残りのフォトカプラーとそのコントローラーを構成している回路は不要。 今後の課題は、VRに代わるLDRの使用法をよりシンプルに出来ないか検討することで、この部分を単純化出来れば、キット化も夢ではなくなる。
posted by Yasuski at 15:07| Theremin

EtherwaveTheremin@PhaseDemodulatorRev.2.0基板の製作

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PhaseDemodulatorとそれに付随するLDRをコントロールするためのCV調整回路をまとめた基板が、まもなく完成する。

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LDRを非反転増幅回路の入力抵抗に使用することで、LDRが持つ抵抗値のカーブを検出している。

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今回組み立てた回路ではVTL5C1を採用している。 この時点ではPhaseDemodulatorの心臓部、LM386の周辺回路は未実装。

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試作回路はユニバーサル基板上に組み立てた。

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ユニバーサル基板にはやはりアルミットが使い易くて良いのだが、欠品のため普通のハンダを使用した。

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楽器本体側は、VolumeAntenna側のシールドを取り外し、基板の設置に備えた。

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アンテナへの干渉をできるだけ避けられる場所に基板を固定する。
posted by Yasuski at 00:42| Theremin

2015年07月06日

EtherewaveTheremin@SpiceModelの信頼度

ここ数日、Demodulatorのシミュレーションを繰り返しているが、どうもLM386のSpiceモデルの中で「AM検波」が行われていないように思える。 そこで、内容は荒っぽいが公開されているアプリケーションノートの等価回路図から内部回路を自作して、それを元にシミュレーションをやり直してみた。  

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所謂「汎用トランジスタ」を使って、LM386の等価回路を作っている。 増幅最終段にある定電流源の値が不明だったので、10mAに設定しているところが大雑把だ。

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驚いたのはこの結果で、今までのシミュレーションとは結果がまるで違う。

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内容的には過渡特性が落ち着いていてとても期待の持てるのだが、これが正解という保証は全くない。

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スペクトルに関しても、倍音特性はなだらかに変化しており、極端なピークの反転も発生していないようだ。

次に、LM386内部の定電流源の設定を、先程行ったシミュレーションの値から1/10の1mAに変更してみたところ、このような結果が出てきた。 

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VRポットの抵抗値が5kΩを超えた辺りから、倍音が殆どなくなってしまうようだ。

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残念ながら、NS公式からは定電流源の値が発表されていないので、こればかりは想像する他はどうしようもない。

以上のように、シミュレーションを行っていてもキリがないので、そろそろ実際の回路を組み立てていくフェイズなのだが、汎用性を前提にした場合に設定するLDRの制御電圧は10VFSが妥当と思える。

EtherwaveのVCA出力はプラマイ10Vに1V程度のオフセットが生じているので、これを1/2に減圧してオフセットを5V程度かければ良いことになる。

posted by Yasuski at 16:15| Theremin

2015年07月05日

EtherewaveTheremin@LDRの抵抗値カーヴの設定について

フィルターVRの閾値のシミュレーションを100Ω間隔で行った。



3kΩあたりから急峻なカーヴで変化が始まり、3.8kΩ手前で収束する。

変化の方向としては、入力側から見て抵抗値の高いほうから低いほうに変化させるのが使い易そうだ。 よって、中心となる抵抗値を「手前に」持ってきて、4kΩから3kΩに掛けての変化カーヴを出来るだけ緩やかに設定することが、制御を行ううえで好ましい特性となる。

まとめると、VRポットの総抵抗値は10kΩで変わらず、1/3ターンほどでターゲットエリアの4kΩに到達し、そこからなだらかなカーヴをもって変化していく特性が望ましい。10kΩ〜4kΩのレンジは、トーンコントロール的な使い方になり、4kΩ辺りを境にサウンドキャラクターが激変する。なお、以上の特性から終端の抵抗値を最小値に追い込む必然は無く、合算で10kΩが保証されるのであれば1k〜2kΩ程度でもOKだろう。

画像は、50Ω毎にシミュレートした場合のスペクトルの推移を記録したもの。



高調波の構成が激変していることが判る。

注意すべき点として、このシミュレーションではLM386に於ける「検波動作」を再現出来ているとはいえず、シミュレーションの結果示されたスイートスポットの数値はあくまでも推測にすぎない。 実際には「現物合わせ」でチューンを行うことになるだろう。
posted by Yasuski at 15:03| Theremin

2015年07月04日

LM386のシミュレーション

LTSpiceの使い方がなんとなく解ってきたので、1kHzの信号をフィルタリングする場合を抵抗値を段階的に変更する方法でシミュレートしてみた。



この結果が正解とはいえないが、急峻な波形の「谷間」の部分がヴォリュームポットの操作によって変化していることが判る。 

実質的に有効な抵抗値はヴォリューム中点の値が入力方向から見て100Ωから2kΩまでで、それ以降は殆ど変化が見られなかった。

LDRの設計において、重要視すべきポイントが見えてきた意義は大きい。

検波が正確に行われていないので、スペクトルの分析精度はイマイチだった。

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一方、オシレーターの出力を20Vppに設定してシミュレーションを行った結果がこれ。



挙動が全く異なるが、こちらがEtherwave本来の仕様に近い。 ヴォリューム抵抗値の有効レンジは0〜5kΩとなった。

なお、今回のシミュレーションでは、#3pin側の入力を固定オシレーターとした。

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最後のシーケンスで、DC成分がドカンとアップしているのが一寸心配。

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posted by Yasuski at 14:03| Theremin

2015年07月03日

EtherwaveTheremin@SPICEモデルによるシミュレートの実験

LTSpiceを使って、LM386製ディテクターのシミュレーションを行った。

LM386は公式のSpiceModelが存在しないので、事前に有志が作ったファイルをLTSpiceに組み込む必要がある。

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回路を組んで、各部品にパラメーターを割り振ってシミュレーションを開始する。

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今回は、オシレーターの発振周波数を400kHzと401kHzに設定した。 結果はご覧のとおり。

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FFTの結果を出力することも出来る。

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時系列でデータを切り取ったものを測定するとこのように差異が明確になった。

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採用している回路に若干の違いがあるが、実際の出音の変化はこのようになる。

posted by Yasuski at 16:16| Theremin

2015年07月02日

EtherwaveTheremin@SignalDetectorの構造解析

LM386を使ったディテクターの信号の流れを整理する。

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C1/C2から入力された高周波信号は2つのルートで合成される。

高周波信号は、R1+R3/R4経由でLM386の3番pin入力でミックスされ、IC内部の入力トランジスターによって復調される。

一方、R4には両端から高周波信号が入力される。R4はVRなのでLM386の1番pinに入力される信号はミックスバランスが変化する。R4とC3で時定数が発生し、ここでフィルター効果が生まれる。 

また、ICに入力された信号は内部でダーリントン接続されたトランジスタの段数による位相の違いが発生する。 この部分では、1番pinに接続されたRC以上のさらに強力なフィルター効果が発生する。

IC内部ではいろいろと計算外のことが発生しているのだろうが、LM386のSPICEモデルはその辺りをシミュレートできるのだろうか?
posted by Yasuski at 21:53| Theremin