monome/arc4の到着を機に、Kymaを包括した音響システムの再構成を行った。

これは、その時に経験したTipsの覚え書き。
Kymaとは、広義にはDigitalAudioWorkstation、略してDAWにカテゴライズされる楽器だが、どちらかと言うと「楽器」寄りの音響制作支援システムといえる。 ここは、「音楽制作寄り」でないことに注意しよう。
今回の目的は、Kymaを主幹としつつも「弱い分野」をヘルパーアプリケーションで補完できる統合的な環境を構築することにある。
作業に入る前にKymaの具体的な欠点を抽出してみた。
まず、弱いのがリズムシーケンスや音楽の小節単位の展開で、シーケンサーとの対局にあるような不便さが目に付く。 KymaにはTimelineという機能があって、これは一見するとMusicalSequencerに非常によく似たトラック別にデータを貼り付ける形をとっている。 注意すべきポイントは、貼り付けられるデータが、Midiや音声ファイルのような「音楽情報」ではなく、音楽情報を含めた、音響的な要素を構成するオブジェクトそのものであることだ。

例えば、エコープレックスのようなものを想像して欲しい。通常この手の機材から想像するのは筐体を持った「現物」であるのだが、Kymaでは動作をシミュレートしたオブジェクトを時間軸沿ってに展開していく。 これは、プロセッシングパワーの消費を抑える意味もあって、喩えるならばシーンごとに機材を「作っては壊す」という行為を仮想空間で実行していることになる。
この方法には色々と利点があって、その一番のポイントは、音声データ・Midi等の制御データ・音響オブジェクトそのものを生成するコンパイル用のデータ、それぞれを全く同じ土俵で扱える点にある。 つまり、エフェクトボードにエフェクターを並べるよりも遥かに自由度が高いレベルで、実装した機能を相互乗り入れで統合できる点が「売り」なのだ。
ユーザー側に、ある程度の電子/音響工学の知識がある場合、直感的に回路の構成を行いつつ、まとめを巨視的に行うことができるのだが、それなりに知識が必要だという敷居の高さも意味している。
一方、一般的なシーケンスソフトのようにGUIを駆使してMidiや音声データ等を手軽に扱うことは苦手で、どちらかと言うと、「機材」や「楽器」を製造する感覚に近いキャラクターを持っている。 故に音楽家、特に演奏家には敬遠される傾向がある。
今立ち上中のシステムは、これらの弱点をカヴァーしつつ、音響や操作面で出来るだけ妥協を行わずに、ライヴシーンにおける操作性と即興性の向上を狙っている。
まず最初に問題となるのは、オーディオ系の結線(仮想を含めた)で、構造がシンプルであるほど、現場のサービス性と信頼性が向上する。手持ちの駒の中では、RME系インターフェイスとT.C.のデジタル・オーディオ・ハブの組み合わせが有力な候補である。


あと、システムを構築する上での制約事項として、時代遅れのDSPボックスを有効利用することが挙げられる。制限された機能の中で、シンプルな構成で有用な仕組みを構築しなければならない。
KonnektX32はSPDIF,AES,ADAT,Firewireと、現存する殆のオーディオ伝送フォーマットに対応していて、拡張性が高い。このハブを中心にデータのやり取りを行なっていく。 想定される使い方は二通りあって、Capyを使用する場合は、単なるデータ変換器として、Pacaranaを使用する場合は、Kymaの直接的な端末となる。

実はこの機材を購入した理由は単純で、Kyma/Pacaranaが対応していないRME製のAD/DAを導入する目的があった。
実は、RMEの通信プロトコルは特殊な独自仕様のために一般には公開されていない。 故にPacaranaとの直結が行えない。そこで、デジタル音声規格の物理的変換が可能な機材の介在が必要となる。
RMEの特徴は音質の良さだけではなく、コンパクトさに相反した拡張性にあり、デジタル端子を含めた60近い入出力数を誇る。さらに、RMEを使う利点はPC直結の卓として機能することで、音声終端回路としてオーディオ回路を纏める役割が期待される。

Fireface800をコントロールするFirefaceMonitorは外部からmidi制御を行うことが可能で、データ形式はMackie/HUIのプロトコルに準拠する。 ただし、これは卓モニター中段のSoftwareAudioの先頭8chのみの対応なので、FirefaceMonitorのポテンシャルを使いこなすには役不足である。
他にSimple MIDI Controlというモードがあって、kymaとのコンビネーションではこちらのモードを推奨する。 各フェーダーに対応するmidi/cc#は以下のとおり。
上段から、ch02/cc102〜cc117、ch03/cc102〜113、中段が、ch05/cc102〜cc117、ch06/cc102〜cc113、下段が、ch08/cc102〜cc117、ch09/cc102〜113 となっている。
その他、コントローラーへのアサインは、midi/noteNumberを使用する。以下、そのラインアップを列挙しておく。
Monitor Main: 3E / 62 / D 3
Dim: 5D / 93 / A 5
Mono: 2A / 42 / #F 1
Talkback: 5E / 94 / #A 5
Monitor Phones 1: 3F / 63 / #D 3
Monitor Phones 2: 40 / 64 / E 3
Monitor Phones 3: 41 / 65 / F 3
Preset 1: 36 / 54 / #F 2
Preset 2: 37 / 55 / G 2
Preset 3: 38 / 56 / #G 2
Preset 4: 39 / 57 / A 2
Preset 5: 3A / 58 / #A 2
Preset 6: 3B / 59 / B 2
Preset 7: 3C / 60 / C 3
Preset 8: 3D / 61 / #C 3
残念ながら、使用頻度の多そうなSolo/Muteスイッチには対応していない。よって、kyma側でMute/Solo機能を実装する必要がある。

旧モデルのCapybaraとは違って、最新型のPacaranaはオーディオインターフェイスを内装していないため、外付けのハードウエアが必須となっている。
ところが、このハードウエアには「食い合せ」が存在するため、選考には神経質にならざるを得ない。Kymaの特殊性はこのインターフェイスの運用ルールで、通常必要な「端末とPCとの通信」を禁止するところにある。 つまり、AD/DAはPCと切り離された状態、つまりハードウエアとして認識されないことが大前提なのだ。
先述したように、RMEはKyma側のデータ通信プロトコルとの互換性がなく、それ故に、独立したAudioMixerとしての使用が可能だ。PCでコントロールされるDigitalドメインのAudioMixerの利点は、PCのからの音声データを直接卓に送り込めること、つまり、PC上のヘルパーアプリケーションとの連携を行うために複数の回線を確保できる点にある。

ヘルパーアプリ側では、予めトラック毎に出力ソースの要素を分解しておき、それをマルチパスで連携する。Kyma側に送り込みたい音源を並列化することで、ヘルパーアプリが不得手なパン・コントロールを容易に実現できるのだ。
具体例として、今回試験的に採用した音声ルーティンを挙げておく。
PCからFirewire800規格でRME・Fireface800に接続:FirefaceからKyma/CapybaraにFW400規格で接続・CapybaraのAES端子とT.C.KonnektX32を接続(キャノンコネクター8本による)KonnektX32とFireface800をADAT規格(TOSLINK)で接続・ といった布陣となった。 今回、KonnektX32は、PCのデータバスからはフローティングされている。
リンクは、monome/arc4でkymaをコントロールした音声データの記録。Fireface800の導入によって、midiデータでkymaの音源を直接コントロールするだけでなく、MacBook上で稼働するアプリケーションの音声をルーティンすることが可能となった。
Pacaranaを導入する場合、KonnektX32がKymaの直接的な端末となる。Fireface800との結合はADAT規格で行う。他のPCとKyma系の処理を分担する場合、2つ目のADAT端子を使用する予定。 KonnektX32単体には、Midi I/Oが付属しないところに注意すること。Pacaranaの背面にはmidiポートが実装されているので、ここにM-Audio等のUSB/midiインターフェイスを接続するとよい。
作業の過程で、Konnekt48を簡易卓としてCapybaraと組み合わせることを思いついた。

この場合、Konnekt48はkymaからスタンドアロンなデバイスとして使用するので、Mac側に外部機器として認識させる必要があるが、認識に必要なkextファイルの扱いがネックで、Pacaranaとの混用を行う場合には起動時に読み込むkextファイルを変更しなければならない。Terminal駆動用の簡単なマクロを組むとしても、機種を変更する場合は、必ず再起動を要求される。 従って、Capybaraの運用そのものをWindowsに限定して行うことが解決策だと思われる。 Windows側では、OSの変更が容易なので、OS毎に対応機種を設定しておけば問題は生じないだろう。